環境への取り組み 気候変動への対応

気候変動を含む環境課題を経営の重要課題として捉えており、2019 年6 月にTCFD提言への賛同を表明しました。TCFD提言の推奨開示事項である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」ごとに、透明性のある開示に努めております。

ガバナンス

当社グループは、持続可能な地域社会と自社の価値創造の実現に向けて、SDGsに関わる取り組みの管理・推進体制を強化しております。
管理面において、サステナビリティ推進委員会を設置し、SDGsに関わる取り組みの進捗状況の報告を3か月毎に行っております。サステナビリティ推進委員会は、委員長を代表取締役社長、副委員長を経営企画部担当役員とし、委員は代表取締役、常務以上の執行役員、全部長で構成され、監査部長ならびに監査等委員のオブザーバー出席の下、報告ならびに議論を行っております。また、SDGsに関わる新たな施策等については、グループ経営執行会議にて十分協議・審議した上で決定しております。サステナビリティ推進委員会における報告事項とグループ経営執行会議における審議事項は、定期的に取締役会へ報告・決議し、取締役会からの監督を受けております。推進面において、当社にサステナビリティ統括室、肥後銀行と鹿児島銀行にサステナビリティ推進室を設置し、グループ各社は緊密に連携し、全社横断的なSDGsの浸透と推進を行っております。

ガバナンス

戦略

当社グループは、気候変動を含む環境課題を経営の重要課題として捉えており、2019年6月にTCFD提言への賛同を表明し、ホームページや統合報告書にて透明性のある開示に努めております。また、SDGsと事業の整合性を高めるために、2020年9月よりUNEP FI(国連環境計画・金融イニシアティブ)が提唱するPRB(責任銀行原則)に署名し、サステナブルファイナンスの推進に努めております。

(1)リスクと機会

当社グループは、気候変動に起因するリスクが、事業運営、戦略、財務計画に影響を与えることを認識しております。シナリオ分析などを活用した気候関連のリスク管理に取り組むと同時に、脱炭素社会の実現に向け、お客様の温室効果ガス排出量削減やエネルギー効率向上に向けた投融資(サステナブルファイナンス)を事業機会と捉え、環境負荷軽減を目的とした金融面での取り組みを積極的に展開してまいります。

(2)移行計画の策定

地域の脱炭素社会の実現に関して重要な役割を担う地域価値共創グループとして、Scope1・2における2030年度までのカーボンニュートラル(算定範囲:当社及び当社100%出資子会社)の達成を目指しております。
また、グループ内の取り組み・施策に加え、地域・お客様の脱炭素支援に向けた移行戦略の策定を行いました。2023年度は環境省のポートフォリオ・カーボン分析支援事業に採択され、投融資先のCO2排出量の総量の分析・把握を行い、高排出セクターである畜産セクターを想定した移行戦略の検討を行いました。
なお、投融資先のCO2排出量の算定あたっては、2022年5月に加盟した国際イニシアティブ「Partnership for Carbon Accounting Financials(PCAF)」の基準に則り、引き続き開示の充実に取り組んでまいります。
肥後銀行においては、2024年1月に100%出資の再生可能エネルギー事業子会社として株式会社KSエナジーを設立しました。また、CO2排出量算定システム「Zero-Carbon-System(通称:炭削くん」)」を開発し、サービスの提供を開始しております。
また、鹿児島銀行では、2024年4月に産学官金の連携による「鹿児島県畜産業におけるGX推進及び産業振興に向けた連携協定」を締結し、牛から排出される温室効果ガスの削減及び生産コストの低減・生産性向上に向けた取り組みを進めております。
脱炭素をはじめとする環境課題に対してグループ全体での知見を深め、今後も地域ならびにお客様のCO2排出量の可視化と削減に向けた取り組みを進めてまいります。

トランジション戦略

(3)シナリオ分析

事業における気候変動の影響を具体的に把握するため、肥後銀行・鹿児島銀行において2050 年までのシナリオ分析を実施し、グループ全体でシナリオ分析の高度化、精緻化を行いました。
気候関連リスクとして、「物理的リスク」と「移行リスク」を認識し、「物理的リスク」では水災など異常気象に伴う資産の毀損による信用コストの増大、「移行リスク」では気候変動に伴う規制強化や消費嗜好の変化などにより影響を受けるお客様に対する信用コストの増大を想定しております。

[物理的リスク]

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の8.5シナリオ(4℃シナリオ)を前提とし、気候変動に起因する自然災害の大半を占め、九州で特に発生確率の高い水災による信用コストへの影響を試算しました。
水災などによる肥後銀行と鹿児島銀行が設定している担保不動産の損傷に起因する価値毀損の推計結果(直接影響)及び建物の損傷に起因するお客様の事業停滞日数の推計結果(間接影響)から、2050年までの信用コストの増加額は最大で66億円程度という結果になりました。

直接影響
(担保価値毀損)
間接影響
(お客様の事業停滞による業績悪化)
リスクイベント 水災
シナリオ 4℃シナリオ(※1)
地域 熊本県・鹿児島県・宮崎県
リスク指標 信用コスト
分析結果(※2) 信用コスト増加額17億円 信用コスト増加額49億円

※1 国土交通省が公表するハザードマップ及び治水経済調査マニュアルを使用し、資産ごとの浸水深及び浸水深に応じた被害額を算定しております。

※2 IPCCによるRCP8.5シナリオ等を参照しております。

[移行リスク]

TCFD提言にて定義されるエネルギーセクターにおいて、移行リスクの定量化を実施いたしました。選定したセクターにおける当社グループの融資先について、炭素税やエネルギー価格および製品構成の変化による融資先の営業費用への影響、および需要の増減に伴う売り上げへの影響から、信用コストの増加額を試算しました。2050年までの信用コストの増加額は単年度最大で146億円程度という結果となりました。
今後も、分析対象の拡大を通じて移行リスクの精緻化を図ってまいります。

リスクイベント 直接影響
シナリオ 1.5℃シナリオ(※)
分析対象 TCFDが定義するエネルギーセクター
地域 国内
分析期間 2050年まで
リスク指標 信用コスト
分析結果 単年度最大で146億円程
  • IEAによる2050年ネットゼロ排出シナリオ(NZE2050)を参照しております。ただしNZE2050シナリオにはない日本のシナリオデータについては、必要に応じて表明宣言シナリオ(APS)等により補完しております。

(4)炭素関連資産

当社グループの貸出金に占める炭素関連セクター(※)の割合は以下の通りです。

エネルギー 運輸 素材・建築物 農業・食料・林産物
1.96% 2.14% 10.49% 3.04%
  • TCFD提言及び日本標準産業分類並びに肥後銀行・鹿児島銀行の業種コード等を用いて分類
    【エネルギー】石油及びガス、石炭、電力ユーティリティ(再生可能エネルギー発電者、独立系発電事業者、水道事業者を除く)
    【運輸】航空貨物、旅客空輸、海上輸送、鉄道輸送、トラックサービス、自動車及び部品
    【素材・建築物】金属・鉱業、化学、建設資材、資本財、不動産管理・開発
    【農業・食料・林産物】飲料、農業、加工食品・加工肉、製紙・林業製品

[物理的リスク・移行リスクを踏まえた当社グループの主なリスクと機会]

短期(3年以内)、中期(3~10年)、長期(10年以上)の時間軸で気候変動に伴うリスクと機会の分析を行っています。

(リスク)

  • 異常気象の激甚化によるお客様の事業活動の停滞、物損被害の発生によって、お客様の事業や財務状況へ影響し、当社グループ貸出資産の価値が毀損する恐れがあります。(短期~長期)
  • 環境問題への対応が競合と比べ劣後することにより当社グループの企業評価が低下する恐れがあります。(短期~長期)
  • 炭素税導入、石油石炭税率引き上げ等の気候変動に関連する政策や温室効果ガス(GHG)排出規制や新築建築物のエネルギー効率規制の強化によって、お客様の事業や財務状況へ影響し、当社グループ貸出資産の価値が毀損する恐れがあります。(中期~長期)

(機会)

  • エネルギーセクターにおける再生可能エネルギーの普及、不動産セクターにおける高効率建築や低炭素建材の導入、自動車・運輸セクターにおける電気自動車や低炭素技術の拡大など、お客様の脱炭素化に向けた設備投資等による資金需要の増加が見込まれます。(短期~長期)
  • 自然災害の激甚化や環境配慮意識の向上によるお客様の行動変化により、自然災害に備えた保険商品や環境保全に関連した金融商品・サービスの提供機会の増加が見込まれます。(短期~長期)
  • すべてのセクターに共通して、異常気象の激甚化により、お客様の防災設備への追加インフラ投資等による資金需要の増加が見込まれます(中期~長期)

リスク管理

当社グループはシナリオ分析の結果を踏まえ、気候変動リスクは当社グループの財務に影響を与える可能性があることを認識しており、以下のような取り組みを行っております。

(1)リスク資本配賦について

気候変動リスクを「外的要因に関するリスク」の一つとして捉え、2023年度より信用リスク算定時のストレスシナリオに物理的リスクを追加しております。想定シナリオ発生時の物理的リスクにおける資本の十分性を確認しております。

(2)投融資について

投融資に際しては、石炭火力発電・森林伐採事業など気候変動に負の影響を与える可能性が高い事業については「サステナブル投融資方針」において原則取り組まない方針を掲げております。融資等の審査においても、第一線の営業店及び融資審査を行う融資関連部がチェックを行い、気候変動への影響を加味した融資判断を行っております。

今後グループ横断的にシナリオ分析を深化し、気候変動リスクの定量化およびリスク管理の高度化に向けて取り組んでまいります。また、投融資におけるエネルギー等炭素関連事業を含めたセクター別の対応方針を協議してまいります。

指標と目標

(1)ESG投融資

ESG投融資累計実行額

(2)CO2排出量

カーボンニュートラル宣言
Scope1・2について、2030年度までにカーボンニュートラル達成
  • 算定範囲:当社及び当社100%出資子会社
CO2排出量削減目標
2019年度比2026年度までに▲20%
2019年度比2030年度までに▲30%
  • 算定範囲:当社、肥後銀行、鹿児島銀行
    目標対象:Scope1、Scope2、Scope3のカテゴリー1(一部除く)、3、4、5、12

【CO2排出量推移(目標対象範囲)】

CO2排出量推移(目標対象範囲)

【CO2排出量推移(総排出量)】

計測項目 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
SCOPE1 ガソリン、LPG、都市ガス等 1,663 1,792 1,818 1,676 1,562
SCOPE2 マーケット基準 8,100 9,143 11,219 8,233 9,280
(参考:ロケーション基準) (10,785) (10,966) (10,120) (9,185) (8,557)
小計 9,763 10,935 13,037 9,909 10,842
SCOPE3 以下 66,965 51,058 342,270 5,133,488 5,607,466
カテゴリー1 購入した製品・サービス 文具、コピー用紙、業務委託費、広告宣伝費等 25,908 26,810 22,731 19,329 21,152
カテゴリー2 資本財 対象年度に取得した有形&無形固定資産 35,599 18,315 24,775 12,479 17,215
カテゴリー3 Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 ガソリン、LPG、都市ガス、電気 1,988 2,105 2,023 1,840 1,786
カテゴリー4 輸送、配送(上流) 郵便料 409 375 372 346 378
カテゴリー5 事業から出る廃棄物 廃棄物処理費 675 964 68 72 58
カテゴリー6 出張 出張 559 559 560 555 555
カテゴリー7 雇用者の通勤 通勤 1,307 1,329 1,330 1,316 1,316
カテゴリー12 販売した製品の廃棄 通帳、PR品費廃棄 520 601 369 173 176
カテゴリー15 投融資 上場株式と社債 - - 290,042 205,872 211,731
事業性融資先 - - - 4,891,506 5,353,099
合計 76,728 61,993 355,307 5,143,397 5,618,308
  • 算定範囲:当社、肥後銀行、鹿児島銀行
  • CO2排出量の計算はGHGプロトコルに準拠し、環境省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基準ガイドライン」「排出原単位データベースVer.3.3」「電気事業者別排出係数」を使用しております。
  • Scope2における排出係数は、算定時点直近における案件所在地の系統電力の電気事業者別排出係数(実排出係数)を使用しております。
  • Scope3のカテゴリー8、9、10、11、13、14は、排出量はゼロとなっております。

【カテゴリー15 TCFD18分類別内訳】

カテゴリー15 TCFD18分類別内訳
  • カテゴリー15について
    【上場株式と社債】
    2024年3月末時点における当社グループの投資残高及び算出時点における投資先の直近期の開示データ(連結ベースのCO2排出量・財務情報)を使用しております。当社グループの投資額(時価ベース)に対する算出割合は78.0%、PCAF定義によるデータ・クオリティ・スコアはスコア2相当となります。
    【事業性融資】
    2022年度より、PCAFが提唱する計測手法を用いて、算出を開始いたしました。当社グループの融資額に対する算出割合は98.7%、PCAF定義によるデータ品質はスコア4相当となります。
    今後は、CO2排出量測定支援等により、ボトムアップ分析による開示を進めてまいります。

(3)その他

SDGs・脱炭素化支援件数
2026年度2,100人
脱炭素アドバイザーベーシック認定者数
2024~2026年度累計2,250件