環境への取り組み 気候変動への対応

気候変動を含む環境課題を経営の重要課題として捉えており、2019 年6 月にTCFD提言への賛同を表明しました。TCFD提言の推奨開示事項である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」ごとに、透明性のある開示に努めております。

ガバナンス

当社グループは、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を取締役会及びグループ経営執行会議の下部に設置しております。3か月毎に気候変動を含む環境課題に係る対応方針や重要事項をサステナビリティ推進委員会にて報告・協議し、結果を経営戦略やリスク管理へと反映しております。2020年12月に「環境方針」を策定し、気候変動を含む環境への取組状況を定期的に取締役会に報告することで、取締役会が気候変動への取り組みを監督する体制を構築しております。
また、気候変動を含む環境課題解決に向けた取り組みについて、当社のサステナビリティ統括室と肥後銀行・鹿児島銀行のサステナビリティ推進室が連携し、進捗状況を管理の上、経営に報告しております。

[気候変動に関する取り組み]

イニシアティブへの参画 内部方針等の制定
2019.6 TCFD提言への賛同 2019.7 投融資に関する指針制定
2020.12 環境方針制定
2021.4 CO2削減目標設定
2022.2 サステナブル投融資方針制定
2022.3 GXリーグ基本構想賛同
2022.5 PCAF加盟
2023.4 GXリーグ参画 2023.3 カーボンニュートラル宣言

戦略

(1)リスクと機会

当社グループは、気候変動に起因するリスクが、事業運営、戦略、財務計画に影響を与えることを認識しております。シナリオ分析などを活用した気候関連のリスク管理に取り組むと同時に、脱炭素社会の実現に向け、お客様の温室効果ガス排出量削減やエネルギー効率向上に向けた投融資(サステナブルファイナンス、トランジション・ファイナンス等)を事業機会と捉え、環境負荷軽減を目的とした金融面での取り組みを積極的に展開してまいります。

(2)移行計画の策定

地域の脱炭素社会の実現に関して重要な役割を担う地域総合金融グループとして、Scope1・2における2030年度までのカーボンニュートラル(算定範囲:当社および当社100%出資子会社)の達成を目指すことを宣言いたしました。
今後は、カーボンニュートラルの達成に向けて移行計画を策定してまいります。
また、2022年5月から国際イニシアティブ「Partnership for Carbon Accounting Financials(PCAF)」に加盟し、投融資先のCO2排出量の算定と開示の充実に取り組んでおります。
今後も、再生可能エネルギー事業などへの投融資やお客様のCO2排出量削減支援を促進し、地域の脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

トランジション戦略

(3)シナリオ分析

事業における気候変動の影響を具体的に把握するため、肥後銀行・鹿児島銀行において2050 年までのシナリオ分析を実施し、グループ全体でシナリオ分析の高度化、精緻化を行いました。
気候関連リスクとして、「物理的リスク」と「移行リスク」を認識し、「物理的リスク」では水災など異常気象に伴う資産の毀損による信用コストの増大、「移行リスク」では気候変動に伴う規制強化や消費嗜好の変化などにより影響を受けるお客様に対する信用コストの増大を想定しております。

[物理的リスク]

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の8.5シナリオ(4℃シナリオ)を前提とし、気候変動に起因する自然災害の大半を占め、九州で特に発生確率の高い水災による信用コストへの影響を試算しました。
肥後銀行と鹿児島銀行が担保として保有する建物の毀損(直接影響)及びお客様の事業停滞によるの業績悪化(間接影響)による2050年までの信用コストの増加額は最大で65億円程度という結果となりました。

直接影響
(担保価値毀損)
間接影響
(お客様の事業停滞による業績悪化)
リスクイベント 水災
シナリオ 4℃シナリオ(※1)
地域 熊本県・鹿児島県
リスク指標 信用コスト
分析結果(※2) 信用コスト増加額8億円 信用コスト増加額57億円

※1 国土交通省が公表するハザードマップ及び治水経済調査マニュアルを使用し、資産ごとの浸水深及び浸水深に応じた被害額を算定しております。

※2 IPCCによるRCP8.5シナリオ等を参照しております。

[移行リスク]

TCFD提言にて定義されるエネルギーセクター(石油・ガス・電力)において、移行リスクの定量化を実施いたしました。選定したセクターにおける当社グループの融資先について、炭素税やエネルギー価格および製品構成の変化による融資先の営業費用への影響、および需要の増減に伴う売り上げへの影響から、信用コストの増加額を試算しました。2050年までの信用コストの増加額は単年度最大で154億円程度という結果となりました。
今後も、分析対象の拡大を通じて移行リスクの精緻化を図ってまいります。

リスクイベント 直接影響
シナリオ 1.5℃シナリオ(※)
分析対象 TCFDが定義するエネルギーセクター(石油・ガス・電力)
地域 国内
分析期間 2050年まで
リスク指標 信用コスト
分析結果 単年度最大で154億円程度
  • IEAによる2050年ネットゼロ排出シナリオ(NZE2050)を参照しております。ただしNZE2050シナリオにはない日本のシナリオデータについては、必要に応じて表明宣言シナリオ(APS)等により補完しております。

(4)炭素関連資産

当社グループの貸出金に占める炭素関連セクター(※)の割合は以下の通りです。

エネルギー 運輸 素材・建築物 農業・食料・林業製品
2.05% 2.13% 10.22% 3.30%
  • TCFD提言および日本標準産業分類および肥後銀行・鹿児島銀行の業種コード等を用いて分類
    エネルギー:石油・ガス、石炭、電力(再生可能エネルギー発電者、独立系発電事業者、水道事業者を除く)
    運輸:空運、海運、陸運、自動車
    素材・建築物:金属・鉱物、化学、建設資材・資本財、不動産管理・開発
    農業・食料・林業製品:飲料・食品、農業、製紙・林業

[物理的リスク・移行リスクを踏まえた当社グループの主なリスクと機会]

短期(3年以内)、中期(3~10年)、長期(10年以上)の時間軸で気候変動に伴うリスクと機会の分析を行っています。

(リスク)

  • 異常気象の激甚化によるお客様の事業活動の停滞、物損被害の発生によって、お客様の事業や財務状況へ影響し、当社グループ貸出資産の価値が毀損する恐れがあります。(短期~長期)
  • 環境問題への対応が競合と比べ劣後することにより当社グループの企業評価が低下する恐れがあります。(短期~長期)
  • 炭素税導入、石油石炭税率引き上げ等の気候変動に関連する政策やGHG排出規制や新築建築物のエネルギー効率規制の強化によって、お客様の事業や財務状況へ影響し、当社グループ貸出資産の価値が毀損する恐れがあります。(中期~長期)

(機会)

  • エネルギーセクターにおける再生可能エネルギーの普及、不動産セクターにおける高効率建築や低炭素建材の導入、自動車・運輸セクターにおける電気自動車や低炭素技術の拡大など、お客様の脱炭素化に向けた設備投資等による資金需要の増加が見込まれます。(短期~長期)
  • 自然災害の激甚化や環境配慮意識の向上によるお客様の行動変化により、自然災害に備えた保険商品や環境保全に関連した金融商品・サービスの提供機会の増加が見込まれます。(短期~長期)
  • すべてのセクターに共通して、異常気象の激甚化により、お客様の防災設備への追加インフラ投資等による資金需要の増加が見込まれます(中期~長期)

リスク管理

当社グループはシナリオ分析の結果を踏まえ、気候変動リスクは当社グループの財務に影響を与える可能性があることを認識しており、以下のような取り組みを行っております。

(1)リスク資本配賦について

気候変動リスクを「外的要因に関するリスク」の一つとして捉え、2023年度のリスク資本配賦において、信用リスク算出時のストレスシナリオに初めて物理的リスクを追加しました。想定シナリオ発生時の物理的リスク追加後の資本の十分性を確認しております。

(2)投融資について

投融資に際しては、石炭火力発電・森林伐採事業など気候変動に負の影響を与える可能性が高い事業については「サステナブル投融資方針」において原則取り組まない方針を掲げております。融資等の審査においても、第一線の営業店及び融資審査を行う融資関連部がチェックを行い、気候変動への影響を加味した融資判断を行っております。

今後グループ横断的にシナリオ分析を深化し、気候変動リスクの定量化およびリスク管理の高度化に向けて取り組んでまいります。また、投融資におけるエネルギー等炭素関連事業を含めたセクター別の対応方針を協議してまいります。

指標と目標

(1)CO2排出量

カーボンニュートラル宣言
Scope1・2について、2030年度までにカーボンニュートラル達成
  • 算定範囲:当社及び当社100%出資子会社
CO2排出量削減目標
2019年度比2023年度までに▲10%
2019年度比2030年度までに▲30%
  • 算定範囲:当社、肥後銀行、鹿児島銀行
    目標対象:Scope1、Scope2、Scope3のカテゴリー1(一部除く)、3、4、5、12

【CO2排出量推移(目標対象範囲)】

2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
Scope1 1,653 1,792 1,818 1,676
Scope2 8,017 9,143 11,219 8,233
Scope3 24,245 25,642 20,256 16,712
CO2吸収量認証等 - - 84 82
SCO2排出量合計 33,915 36,577 33,209 26,539
【CO2排出量推移(目標対象範囲)】

【CO2排出量推移(総排出量)】

計測項目 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
SCOPE1 ガソリン、LPG、都市ガス等 1,672 1,653 1,792 1,818 1,676
SCOPE2 電気 10,633 8,017 9,143 11,219 8,233
小計 12,305 9,670 10,935 13,037 9,909
SCOPE3 以下 53,147 66,947 51,058 342,270 1,003,070
カテゴリー1 購入した製品・サービス 文具、コピー用紙、業務委託費、広告宣伝費等 23,980 25,908 26,810 22,731 19,329
カテゴリー2 資本財 対象年度に取得した有形&無形固定資産 23,566 35,599 18,315 24,775 12,479
カテゴリー3 Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 ガソリン、LPG、都市ガス、電気 1,966 1,970 2,105 2,023 1,840
カテゴリー4 輸送、配送(上流) 郵便料 493 409 375 372 346
カテゴリー5 事業から出る廃棄物 廃棄物処理費 690 675 964 68 72
カテゴリー6 出張 出張 564 559 559 560 555
カテゴリー7 雇用者の通勤 通勤 1,335 1,307 1,329 1,330 1,316
カテゴリー12 販売した製品の廃棄 通帳、PR品費廃棄 553 520 601 369 173
カテゴリー15 投融資 上場株式と社債 - - - 290,042 205,872
事業性融資(石油・ガス・電力) - - - - 761,088
合計 65,452 76,617 61,993 355,307 1,012,979
  • 算定範囲:当社、肥後銀行、鹿児島銀行
  • CO2排出量の計算はGHGプロトコルに準拠し、環境省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基準ガイドライン」「排出原単位データベースVer.3.2」を使用しております。
  • Scope2における排出係数は、算定時点直近における案件所在地の系統電力の電気事業者別排出係数(実排出係数)を使用しております。
  • Scope3のカテゴリー8、9、10、11、13、14は、排出量はゼロとなっております。
  • カテゴリー15について
    【上場株式と社債】
    2021年度より、PCAFが提唱する計測手法を用いて、算出を開始いたしました。算出に当たっては、年度末における当社グループの投融資残高、各社企業にて開示されている最新のCO2排出量(連結での排出量:Scope1・2)及び財務情報を使用しております。2022年度においては、当社グループの投資額(時価ベース)に対するカバー率は88.2%、PCAF定義によるデータ品質は、スコア2相当となります。
    【事業性融資】
    2022年度より、PCAFが提唱する計測手法を用いて、算出を開始いたしました。算出に当たっては、エネルギーセクター(石油・ガス・電力)を対象にしております。PCAF定義によるデータ品質は、スコア4相当となります。
    今後、カテゴリー15の算出について精緻化に向けて取り組みを継続してまいりますが、算出対象の拡大や算出手法の変更等により、CO2排出量が増減する可能性がございます。

(2)環境関連投融資

環境関連投融資目標
2021年度~2030年度累計実行額2,000億円
【環境関連融資実行額(億円)】
【再生可能エネルギー融資実行額(億円)】