気候変動を含む環境課題を経営の重要課題として捉えており、2019 年6 月にTCFD提言への賛同を表明しました。TCFD提言の推奨開示事項である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」ごとに、透明性のある開示に努めております。
当社グループは、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を取締役会及びグループ経営執行会議の下部に設置しております。3か月毎に気候変動を含む環境課題に係る対応方針や重要事項をサステナビリティ推進委員会にて報告・協議し、結果を経営戦略やリスク管理へと反映しております。2020年12月に新たにグループ「環境方針」を策定し、気候変動を含む環境への取組状況を定期的に(少なくとも年1回)取締役会に報告し、取締役会が気候変動への取り組みを監督する体制を構築しております。
また、気候変動を含む環境・社会課題解決に向けた取り組みをグループ全体で推進するにあたり、本社にサステナビリティ統括室、傘下子銀行にサステナビリティ推進室を設置し、適切に管理する体制を整えており、施策推進の実効性を確保しております。
[気候変動に係る審議・報告事案]
環境方針の策定、CO2排出量削減目標の進捗状況、環境関連投融資状況、その他気候変動を含む環境課題解決に向けた取り組みの進捗状況報告、等。
当社グループは、気候変動に起因するリスクが、事業運営、戦略、財務計画に影響を与えることを認識しております。シナリオ分析などを活用した気候関連のリスク管理に取り組むと同時に、脱炭素社会の実現に向け、お客様の温室効果ガス削減やエネルギー効率向上に向けた投資(サステナブルファイナンス、トランジションファイナンス)を事業機会と捉え、環境負荷軽減を目的とした金融面での取り組みを積極的に展開してまいります。
事業における気候変動の影響を具体的に把握するため、肥後銀行では環境省「2020年度TCFD提言に沿った気候リスク・機会のシナリオ分析パイロットプログラム支援事業」の採択を受け、中長期(2050年まで)のシナリオ分析を実施しました。
気候関連リスクとして、「物理的リスク」と「移行リスク」を認識し、「物理的リスク」では風水災など異常気象に伴う資産の毀損による信用リスク、「移行リスク」では気候変動に伴う規制強化や顧客消費嗜好の変化などにより影響を受けるお客様に対する信用リスクの増大等を想定しています。
[物理的リスク]
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の8.5シナリオ(4℃シナリオ)を前提とし、気候変動に起因する自然災害の大半を占め、九州で特に発生確率の高い風水災による与信関連費用への影響を試算しました。
物理的リスクの影響は、台風・豪雨によって肥後銀行が保有する担保不動産の損傷に起因する価値毀損の推計結果(直接影響)及び建物の損傷に起因するお客様の事業停滞日数の推計結果(間接影響)から与信コストの増加額を試算しました。2050年までの与信コストの増加額は最大で33億円程度にとどまるという結果となり、影響は限定的と考えられます。
直接影響 (肥後銀行の担保価値毀損) |
間接影響 (お客様の売上停滞による業績悪化) |
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リスクイベント | 風水災 | |
シナリオ | 4℃シナリオ※ | |
分析対象 | 熊本市内全保有不動産担保物件のうち「建物」に該当する担保 (5,222件) |
熊本市内繁華街中心に所在する企業 (382件) |
リスク指標 | 与信関連費用(信用コスト) | |
分析結果 |
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[移行リスク]
与信エクスポージャーなどからリスク影響度の高いセクターを選定し、国際エネルギー機関(IEA)の「2℃シナリオ」、「4℃シナリオ」を前提に、政策・法律、市場・技術変化、評判、物理的リスクなどを評価項目とした気候変動に伴うリスクを分析しました。
セクター | 主な評価項目 | 主なリスク | |
エネルギー | 政策/法律 |
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市場/技術 |
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物理的リスク |
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不動産 | 政策/法律 |
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市場/技術 |
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物理的リスク |
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自動車・運輸 | 政策/法律 |
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市場/技術 |
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物理的リスク |
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[物理的リスク・移行リスクを踏まえた当社グループの主なリスクと機会]
(リスク)
(機会)
シナリオ分析の結果を踏まえ、気候変動の緩和と適応に対して、関連する事業の展開を機会と捉え、肥後銀行では事業計画などに、脱炭素を含むSDGs関連事業について明示しています。お客様の脱炭素の取り組み促進として、SDGsコンサルティングによる伴走型支援、サステナビリティ・リンク・ローンなどの商品開発を始めました。
また今回実施した分析は、初めての取り組みであり、戦略やリスク管理へ更なる反映の余地があると認識しております。2021年度は分析対象セクター・エリアを拡大し、引き続きグループ全体でのシナリオ分析の高度化、精緻化を図ってまいります。
当社グループはシナリオ分析の結果を踏まえ、気候変動リスクは中長期的に当社グループの財務に影響を与える可能性があることを認識しております。気候変動リスクを「外的要因に関するリスク」というカテゴリーに加え、統合的なリスク管理を行っております。
投融資先の審査において、ESGに資するものか、あるいは反するものか、第一線の営業店及び融資審査を行う融資関連部がチェックを行い、ESG要素を加味した融資判断を行っております。
今後グループ横断的にシナリオ分析を深化し、気候変動リスクの定量化に向けて取り組んでまいります。また投融資におけるエネルギー等炭素関連事業を含めたセクター別の対応方針を協議してまいります。
計測項目 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | |
SCOPE1 | ガソリン、LPG、都市ガス、A重油、軽油、灯油 | 1,741 | 1,672 | 1,653 | 1,792 |
SCOPE2 | 電気 | 11,731 | 10,633 | 8,017 | 9,143 |
小計 | 13,472 | 12,305 | 9,670 | 10,935 | |
SCOPE3 | 以下 | 45,478 | 53,147 | 66,947 | 51,058 |
カテゴリー1 購入した製品・サービス | 文具、コピー用紙、水道、電話電信、業務委託、交際接待、広告宣伝、備品、土地建物賃借、機械賃借、保守料、警備費等 | 23,912 | 23,980 | 25,908 | 26,810 |
カテゴリー2 資本財 | 対象年度に取得した有形&無形固定資産 | 15,763 | 23,566 | 35,599 | 18,315 |
カテゴリー3 Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 | ガソリン、LPG、都市ガス、電気 | 2,072 | 1,966 | 1,970 | 2,105 |
カテゴリー4 輸送、配送(上流) | 郵便料 | 545 | 493 | 409 | 375 |
カテゴリー5 事業から出る廃棄物 | 廃棄物処理費 | 628 | 690 | 675 | 964 |
カテゴリー6 出張 | 出張 | 580 | 564 | 559 | 559 |
カテゴリー7 雇用者の通勤 | 通勤 | 1,375 | 1,335 | 1,307 | 1,329 |
カテゴリー12 販売した製品の廃棄 | 通帳、PR品費廃棄 | 603 | 553 | 520 | 601 |
合計 | 58,950 | 65,452 | 76,617 | 61,993 |
【再生可能エネルギー融資実行実績(億円)】
【環境関連投融資目標】
2021年度~2030年度 環境関連投融資累計 |
2,000億円 |
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