2022年8月に「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラム」に参画し、2024年1月に「TNFD Adopter」へ登録しました。また、2024年4月には「生物多様性保全方針」を制定しました。
戦略を検討するにあたり、LEAPアプローチを活用した分析を段階的に実施しています。今後も地域特性を踏まえ、重要エリアの特定や優先セクターの検討を進めてまいります。
当社グループは、事業活動と自然資本の関係を依存と影響という観点で整理するため、ヒートマップを作成し、19セクターにおける分析を実施しました。分析の結果、生態系サービスへの依存関係においては「洪水緩和」「水供給」などへの依存が、自然資本への影響関係においては「GHG排出量」「水質汚染物質」「水使用量」「土地使用域」への影響が比較的高いことがわかりました。
気候・自然関連のリスクは業種ごとに影響度が大きく異なるため、業種別の分析を実施しました。当社グループでは、取引先企業の気候・自然への依存とインパクト・当社グループの融資残高のエクスポージャーを業種ごとに数値化し、マッピングを実施しています。

さらに業種ごとの依存・インパクトとエクスポージャー分析を実施した結果、地域の基幹産業である「農林漁業」、「観光業(宿泊・飲食業等)」への依存と影響が比較的大きいことが確認されました。なお、建設業、製造業などビジネスにおける土地利用の転換の加速・水需要の増大といった幅広い業種に影響を与える「水」に焦点を置いた分析も進めています。
当社グループにおける自然との関わりを把握するため、主な事業基盤のうち熊本県と鹿児島県における物理的な水リスクに関する分析をグローバルツールに基づき行ったところ影響は低から中程度との結果になりました。
一方、例えば熊本県内では、豊富な地下水の供給源を多く含むことがわかっており、グローバルデータではうまく表現されていない可能性もあるため、ローカルデータを踏まえた自社の営業拠点のリスク把握についても検討してまいります。

当社グループは、短期(3年以内)、中期(3~10年)、長期(10年以上)の時間軸で生物多様性に伴うリスクと機会の分析を行っています。
| 種類 | 事業へのインパクト | 時間軸 |
| 物理的リスク | 自然資源の急性・慢性的な現象、弱体化した生態系サービスがお客様の事業財務状況へ影響を与え、当社グループの貸出資産の価値が毀損する恐れがあります。 | 短期~長期 |
| 移行リスク | 自然に関与する企業の生産プロセスにおいて、直接あるいは間接的に不利になるような厳しい政策の導入や社会的規範の浸透が、お客様の事業や財務状況へ悪影響を及ぼし、当社グループの貸出資産の価値が毀損する恐れがあります。 | 長期 |
| 機会 | 消費者の行動変化による自然へのポジティブ・ネガティブな影響の緩和効果を持つ製品・サービスの開発など、お客様の生物多様性保全推進に向けた取り組み増加等による資金需要の増加が見込まれます。 生息地や生態系の保護、再生、修復を支援する活動を通じ、お客様の持続可能性の高い事業継続に寄与します。 |
短期~長期 |
当社グループの主な営業基盤である熊本県と鹿児島県の自然特性・産業特性について、自治体の報告書などを基に情報収集と整理を行いました。その結果、熊本県と鹿児島県として重要な依存とインパクト、それらと関係性の深いセクター等について確認することができました。複数考えられるテーマのうち、今回は、熊本県では「豊かな地下水資源と依存・インパクトの集中」、鹿児島県では「世界自然遺産と観光業の間の依存・インパクトの相互関係」に焦点を当てた整理を行いました。今後はこれらの地域の産業特性を踏まえ、ポートフォリオを通じた自然資本と生物多様性への依存とインパクトの軽減に向けた取り組みを検討してまいります。
白川中流域は大半を農地や山林が占め、地下水への寄与が大きい地域です。農林業がもたらす豊富な地下水資源にあらゆるセクターや地域住民が依存しています。一方で、近年は離農や耕作放棄などに伴う里地などの荒廃が課題となっており、農林業の衰退に伴う管理放棄は、地下水へ負のインパクトを与える懸念があります。また、大量の水を必要とする製造業は地下水資源に対して甚大なインパクトをもたらす可能性があるほか、産業集積に伴う急速な都市化による地下水浸透面削減のインパクトも懸念されます。地下水資源の減少によるインパクトは淡水供給サービスに依存している産業や地域社会にも波及する可能性があります。

島しょ部の世界自然遺産である「屋久島」と「奄美大島及び徳之島」では、屋久杉やサンゴ、マングローブなど、地域の生態系が観光資源として美しい自然の風景やレクリエーションの場などの文化的サービスを提供しています。一方で、このような自然を目的に訪れた観光客の人数が増えることで、踏圧や騒音、野生動物の死亡事故による生態系のかく乱、意図しない侵略的外来種の持ち込み、屋久島におけるし尿やゴミ等廃棄物による汚染などの負のインパクトを与え、それが結果的に依存している生態系サービスの毀損につながる可能性があります。

当社グループの営業拠点のある熊本県においては、ビジネスにおける土地利用の転換の加速や水需要の増大により、地下水涵養量の減少が懸念されています。そのような中、肥後銀行は学金連携によるグリーンインフラを活用した革新的な金融手法の研究開発を行っています。また、藻場の再生に関する連携協定の締結によるブルーカーボンの創出事業など、地域の自然資本・生物多様性の保全を通じたビジネス機会の創出に取り組んでいます。
肥後銀行は、熊本県芦北町、芦北町漁業協同組合、熊本県立芦北高等学校、鹿島建設株式会社及び公益財団法人肥後の水とみどりの愛護基金と芦北地域におけるアマモ場をはじめとする藻場の再生に関する連携協定を締結しました。
連携協定に基づいて、6者で以下のような取り組みを実施しています。

2025年3月、肥後銀行は熊本県立大学、熊本大学、サントリーホールディングス、日本政策投資銀行、MS&ADインシュアランスグループホールディングスとともに、「熊本ウォータポジティブ・アクション」始動イベントを開催いたしました。
本アクションでは、雨庭などのグリーンインフラを用いて、開発が進む地域における水循環の保全に取り組みます。緑を活用した水循環の保全は、地下水の涵養とともに内水・外水氾濫の軽減、ヒートアイランド対策、景観の向上や生物多様性の向上など多面的な効果が期待できるとされています。6組織がそれぞれの強みを活かし、社会全体での水循環保全の取り組み促進を目指してまいります。
